vol.3 [アルバム] SOUNDTRACKS / Mr.Children

Mr.Childrenにとって20枚目となるオリジナルアルバム「SOUNDTRACKS」 この1枚について感じた事を 超主観的に考えていこうと思います。 

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まず言いたいのは、このアルバムは間違いなくMr.Childrenだということ。そりゃそうだろ Mr.Childrenが出してるアルバムだし! って思いますよね。もっとちゃんと表現するなら 「確実に4人の音が鳴ってる Mr.Childrenの素の作品」ってことになります。

 

今回のアルバムは、「REFLECTION」や「重力と呼吸」のように Mr.Children自身がプロデューサーとして、演者として、自分達で自分達を突き詰めていく。そんな流れがあったと思います。

 

しかし今回のアルバムは実に多くのアーティスト、スタッフが客観的に見たMr.Childrenの良さを120%引き出したものだと思いました。もしかしたら、制作の雰囲気は「4人が4人を取り巻く制作環境に身を委ねて 自然と音を鳴らす」みたいな空気感があったのかもしれません。

色々それっぽいことを並べましたが、まずはアルバムを全て聴いてみた感想から… 簡潔に感想を述べるなら「めっちゃ体に馴染む」 こんな感じでしょうか。 いままで聴いたことがないMr.Childrenなのは確実で、なのに聴いていると「あー Mr.Childrenだわ」ってなるんです! 

 

今回のアルバムは、「バンドアレンジ」「ストリングス」の存在を全面に押し出している曲が多いと感じています。 今までのMr.Childrenなら絶対的にVo.桜井和寿の歌声を重視して、それをどうやればリスナーに届けられるか?を研究して 研究して 研究し尽くすバンドアレンジが基本だったと思います。しかし今回は、「楽器の音を聴いて欲しい」って訴えかけてくるような「音の世界」が広がっています。 

例えば、"Brand new planet"の さすが田原さん そう感じるほどの スライドギターソロ また、"others"のアウトロではこれでもか!ってくらいストリングスが生きています。これは、"君と重ねたモノローグ"でも同じことが言えますよね。

 

あと、これは個人的な感想なんですが、 今回は「歌声」もひとつの楽器として捉えているなと思ったんです。曲を聴いていると感じるんですが、今回はメンバーやサポートスタッフ ストリングスメンバー これらの演者が横一線で並んでるイメージが湧いてきます。バンドはボーカルのことをよく「フロントマン」と表現しますよね、これは楽曲やライブで核になるエース的存在、ほかのメンバーよりも1歩前に出るべきパートだってことを言ってるって解釈してます。が、今回は 桜井さんは歌声がアルバムにおいてめちゃくちゃ重要視されてるか?って言われたら、そうでは無いような気がして(勿論ボーカルは超重要ではあるんですが)  全パートの音を横一線に揃えることで、ボーカルを楽器と共鳴させて溶け込ませる。そんなバランスを感じました。  

 

Mr.Childrenの楽曲において、桜井さんの歌声っていうのは、曲全体のアクセントなのは勿論のこと、リスナーに「衝撃を与える」効果が大きいと感じています。 これは、歌声に感情を乗せるのが天才的だったり 抑揚や音節の使い方が多彩だったりするのが要因だと思います。しかし今回は、その「衝撃」や「感情の起伏」を楽器の音で表現している部分が多いと思います。 

 

通常なら曲のイメージを変えていく時は、ボーカルの転調を利用します。有名なものだと"終わりなき旅"は転調の連続ですよね。 転調することで、曲が上り詰めていく感じだとか、高揚感を演出しているはずです。 しかし今回のアルバム、ボーカルに関してはほとんど転調がありません。 割と、1サビ〜2サビ〜ラストまでが スーっと流れていくような感覚だと思います。 じゃあ何が曲に「抑揚を与えているか」を考えていきます

まず「JENのドラムプレイ」がでかいです!これほんとにそう思います。 Birthdayでは各サビのドラムリズムを、全て変えています。(明確には音を増やしたり、逆に減らしたり) 分かりやすいのは、1サビと2サビのリズムの刻み方ですね、全く違うものになってます。その他の曲も例を挙げればキリがないです… そのくらい今回は「JEN」の存在感が際立ってます。 

次に「ストリングス」の存在です。今回のアルバムでは、ストリングスをほぼ現地スタッフに丸投げ(というか 勝手に進められてた(笑) )という形を取っていると思います。 "MINE"を見てもそんな感じですし、ロッキング・オン・ジャパンを読んでみたらハッキリそう書いてまりました。 本来であれば、ストリングスパートというのはリスナー側からしたらあまり意識して聴くことはないと思います。 自分もそこまで意識したことは無いので…  しかし今回のアルバム アウトロがとんでもないことになってます。聴いた方はお分かりの通りですが、"君と重ねたモノローグ"と"others"です。 このふたつのアウトロ…もはやアウトロだけでひとつの曲ですよ(笑) そのくらい それまでの流れから一変します。 この2曲は綺麗なバラード調で、ピアノとかでしっとり終わる曲ってイメージでした。 ところがどっこい! 歌い上げた後 もう「クラシックのアルバム聴いてるんだっけ?」って勘違いしそうになるくらい、ガッツリストリングス…いやもはやオーケストラの域で弦が鳴ってます。 また面白いことに、曲のBPM(1分あたりの拍数)がここで変化します。 アウトロになっていきなり転調するんです!この「抑揚」の付け方は驚きました。 

 

「音楽性」についての話をしてるとキリがないので、この辺で別の話を…

 

このアルバムについて、雑誌等のメンバーインタビューで「終わってくことを意識した…」や「歳をとったことを実感した」など、終わりや別れ 究極的には「死」をイメージしている事が伺えます。 Mr.Childrenは2015年に"Starting Over"という曲で、『何かが終わりまた何かが始まるんだ』という。「終わり」と「始まり」は繋がっていることや、ライブではウルボロスを曲の映像として使用したりしています。

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※ウルボロスとは 死と再生の象徴

 

Mr.Childrenは割と「まだまだこれから!」とか「進化し続けるぞ!」みたいな、永久に進化し続けていくことをバンドの方針にしているところがあると思います。代表曲の"終わりなき旅"なんてまさにそれを歌ってますよね!

そんな「続くこと」を歌ってきたバンドが出した 終わること を歌ったアルバム。かなり衝撃的でした… 勿論Mr.Childrenが終わるわけないと思っているし そうであって欲しいので「えっ? Mr.Childrenの活動に終止符打つ日が近いの?」とはなりませんでしたが。

 

桜井さんは、こんなことを言っています「若い人には理解出来ないかもしれない。ー 毎日仏壇に手を合わせるような人には分かってもらえると思います。」  要は、「終わり」というものを意識してこそ見えてくる「何か大事なもの」があることを示しているんです。恐らく…

(自分自身まだ20代なので 死や終わりに関して イメージが薄ぼんやりしているので ここからはあくまで想像です)

ここで「Documentary film」の歌詞を例に考えてみたいと思います

枯れた花びらがテーブルを汚して

あらゆるものに「終わり」があることを

リアルに切り取ってしまうけれど

そこに紛れもない命が宿ってるから

君と見ていた

愛おしい命が

「枯れた花びらがテーブルを汚す」というシチュエーションから想像できるのは、家で大事にしていた、花瓶に挿していた花が枯れてしまった、そんな場面です。

大事にしているからこそ、ちゃんと水をあげて、「枯れないように」花を愛でている事が伝わってきます。それでも、時の流れと共に終わりがやってくる→「枯れる」という事が起きてしまいます。

『あらゆるものに〜切り取ってしまうけれど』では、抗うことの出来ない「死」という結末を目の当たりにして、立ち尽くしてしまう様子が想像出来ました。

しかしここからが大事な場面で、枯れた花を見て「紛れもない命」という表現をしているんです。終わってしまったもの、もう命朽ちてしまったものを見て 『命が宿っているから』と続けているんです。普通なら『命が宿っていたから』と過去形になるところを…

ここで若いながらに勘づいたことがあります。それは「死んでいくこと」と「終わってしまうこと」は違うという事を言いたいのではないか? 「死」という状態もひとつの「命の形」なのではないか?ということです。(なんか宗教じみた見解みたいになっちゃいましたね)

 

2015年の未完ツアーで印象的だった桜井さんのMCがあります。仏教のブッダについての話で

「生きている人は生きたまま愛せばいいし、死んでしまった人は死んだまま愛せばいい」

そんなふうに言っていた気がします。

これをMr.Childrenに置き換えて考えるなら

Mr.Childrenは今、音楽を鳴らしているけれども、もしMr.Childrenが現役を退いて 皆の前から姿を消したのなら、もうそこにはいないMr.Childrenの音を聴けばいい」

こんなことが言えると思います。

 

Mr.Childrenは今回の「SOUNDTRACKS」をMr.Childrenの最高傑作と言うと同時に、「皆の人生に鳴るサウンドトラックになって欲しい」と言ってくれています。 

自分はMr.Childrenにとってこの作品は「ファンに向けての遺作」という役割を担っていると思っていて、もしMr.Childrenが明日いなくなったとしてもそれは終わりではないから、このアルバムを聴いてMr.Childrenを感じて欲しい そんなメッセージを受け取った気がします。

長くなっちゃいました
そろそろまとめますね( ˊᵕˋ ;)💦

Mr.Childrenは今回のアルバム
SOUNDTRACKS 

これをリリースした事で、1度Mr.Childrenを終わらせたと思っています。ファンを動揺させた「現時点では、このアルバムで最後にしたい」発言…これは実際に最後なのだと思っています。 Mr.Childrenは今回「音楽を作る目的から解放され ただ純粋に曲を作った」と述べています。でもファンならお分かりの通り Mr.Childrenは音楽の目的やメッセージを重視するバンドです。その彼らが、28年目にしてただ曲を作る境地に達し、その結果最高傑作が生まれた。

これは「28年目の実力」というよりは、「28年分の歴史の全て」を背負ったアルバムだと言い切っていいと思っています。(あくまで1ファンの見解ですが)

それを証明するような このメッセージ

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これを見て確信したのは

Mr.Children28年分の過去の歴史の全てを原動力にして、次に聴いてもらうMr.Childrenの音を 1年目のバンドとして届ける

そんな決意です。

 

20枚目のアルバムにして

28年目のMr.Childrenの最高傑作

そしてMr.Children第1章の最高到達点

 

1人のMr.Childrenのリスナーとして

このアルバムは大事にしたいと思いました。

 

 

 

後書き: 初めての長文投稿だったので、記事を書くのに1週間くらいかかりました。 いやそれでこのクオリティの低さ!? っていのは重々承知してます すいません🙇‍♂️ これから精進します。